蒸気タービンについてSTEAM TURBINES

タービンについて

歴 史

蒸気タービンは、ギリシャの数学者へロンが紀元前120年に考案した「ヘロンの回転球」がその原形といわれています。駆動原理は、軸付の回転球の円周上にノズルを取り付けて、ノズルから噴出する蒸気の反動で軸を回転させるものでした。その後、1629年にイタリアの建築家ブランカが、現在の衝動式タービンと同じ原理のブランカ機関を考案しましたが、まだ構想レベルであって実用とは程遠いものでした。

それから150年余の後、1890年代に入ると一転してタービンの開発・実用化が進みます。1882年スウェーデンのドラバルによる衝動式タービンの開発、1884年にイギリスのチャールスバーソンスによる多段階反動式タービンの開発、1889年には発電用として実用化。1895年アメリカのカーティスによる二段階多速衝動式タービンの開発、1898年にはフランスのラトーが現在の原形となるタイプのタービンを実用化しました。

蒸気の反動で回転する回転球

原理と
特徴構造

蒸気タービンとは、蒸気の持つ熱エネルギーを羽根車の回転エネルギーに変換する装置で、原動機の一種です。高温高圧の水蒸気をノズルまたは固定羽根を通して噴出・膨張、あるいは方向変化させて高速の蒸気流をつくり、これを軸に取り付けた羽根に噴き付けて軸を回転させることで回転エネルギーを生み出します。簡単に言えば、水車が水の力で、風車が風の力で回転しているのと同じように、蒸気の力で羽根車を回転させようとするのが蒸気タービンの原理です。

原理と特徴構造

発電所や工場などで利用されている蒸気タービンは、石炭、石油、ガス等の化石燃料、或いはバイオマス、ゴミ等の廃棄物を燃料として、ボイラーで高温高圧の蒸気を大量に発生させます。この蒸気をタービン内に導きノズルから噴出させます。その際、蒸気は減圧(膨張)することによって高速流になり(圧力エネルギーを速度エネルギーに変換:ベルヌーイの定理)、さらに蒸気を羽根に衝突させることによって、その衝撃力で羽根車を回転させて(速度エネルギーを動力エネルギーに変換)いるのです。

蒸気タービンは、羽根付近での蒸気の挙動によって衝動式タービンと反動式タービンに大別されます。

衝動式タービンは、ノズルから噴き出す高速の蒸気が羽根に衝突する際時に衝撃力を与え、羽根が前進するに連れて羽根車を回転させます。
主な特徴は、一段あたりの熱落差を大きく出来るので、羽根が大型になり段数は少なくなります。

一方反動式タービンは、ノズルから噴き出す高速の蒸気が羽根に衝突し衝撃力を与える過程までは同じですが、羽根の中に流入した蒸気が羽根から流出する際時に膨張することによって反動で羽根の前進する力が発生し、羽根車を回転させます。

主な特徴は、衝動式タービンとは反対に一段あたりの熱落差が小さくなるので、羽根は小型になって段数が多くなります。
他にも羽根車の段数、抽気、蒸気の流れ方向などによって細かく分類することが出来ます。

用 途

私たちの日常生活を支えている電気は発電所で作られていますが、この火力発電所や原子力発電所で発電機の駆動用として用いられている原動機が蒸気タービンです。蒸気タービンは、他にも大型船舶のエンジンとしても広く使われていますし、小型の蒸気タービンは石油化学プラントのポンプや送風機の原動機として、利用されています。

このように蒸気タービンは身近ではないものの、見えないところで私達の生活に密接に関連しています。

火力発電・原子力発電

火力発電や原子力発電は、生活や産業に欠かせないもので、燃焼炉(原子炉)、ボイラー、蒸気タービン、発電機が主な構成要素です。
火力発電は石油、石炭、ガスといった化石燃料の燃焼熱、原子力発電は原子炉内での核分裂で発生する熱を利用してボイラーで蒸気を作り、その蒸気で蒸気タービンを運転して発電機を駆動することによって電力を生み出しています。

バイオマス発電・ゴミ焼却発電

バイオマス発電は、火力発電の一種で燃料にサトウキビの絞りかす等の農業廃棄物を使用するのが特徴です。一年中農業生産物がとれる暖かい地域(外国)で数多く設置されています。
特に地球温暖化防止が叫ばれている昨今、二酸化炭素を増加させない(バイオマスは、元々空気中の二酸化炭素を植物が固定化しただけなので、燃やしても二酸化炭素が元の空気に戻るだけ)発電として、注目されています。
ゴミ焼却発電は、ゴミ焼却場を建設する際に廃熱を回収して発電するもので、これも火力発電の一種です。燃料にゴミを使用しますが、下水処理場で発生する汚泥を燃料にしている例もあります。ゴミ焼却発電もバイオマス発電と同じく二酸化炭素を増加させないので、地球環境に優しい発電方式です。

石油化学プラント

石油化学プラントを人間に例えると、配管が血管でありポンプが心臓にあたります。しかし人間と違うのは血液の代わりに揮発性、引火性の高い液体が流れていることが多く、それが僅かでも漏れ出し引火すると大爆発を起こしかねないことです。
そのために、石油化学プラントの内部はもとより周囲も火気厳禁になっています。
そのような環境下では、モーターはアーク(火花)が出て引火する可能性があるので使えません。そこで電気を使わない蒸気タービンが、引火の心配がない原動機としてポンプや送風機の駆動用に利用されています。

船舶用

船舶のエンジンには、ディーゼルエンジン(低速大型、中低速中小型、高速)、タービン(ガス、蒸気)、その他(原子力、ジェット推進など)があります。
蒸気タービンは、比較的大型の高速船や艦艇で多用されています。